動機のない行動



見渡した室内は、不気味なほど黒い。その黒さに、わたしはくらりとした眩暈を覚えた。

就職するなら、それ相応の服装を。
そんな理由でリクルートスーツに身を包んだひとたちは、少し怖い。

「なんでこんなに必死なのよ……」
周囲には聞こえないように、小さく呟く。少しでもいいところに、自分の希望に合う企業を探して必死のひとたちに、わたしは馴染めない。だって、ダメだったらそのときはそのときでしょう?


自分の働きたい企業の説明を聴くひとたちの背中を眺めながら、適当にひとの少ない企業ブースに近付いて席に着く。
他のひとたちほどの情熱を持たないわたしは、この空間に馴染めないままだ。


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